いつまで放置?近所の崩壊現場

近所の崩壊現場の件です。ちょっとした、ニュースになりました。

場所は、ココ。



2025/1/30 午前9時半ごろ 崩壊発生当初
姫路市山畑新田

家屋中まで崩壊岩石が…。


当時の報道では…。

県や市によりますと、午前2時前に現場の山が幅およそ25メートル、高さおよそ15メートルに渡り崩れ、ふもとの住宅1棟の一部に土砂が流れ込んだということです。

この家には89歳の女性が1人で暮らしていましたが、けがはありませんでした。県や市が復旧作業や被害拡大防止にあたるとともに、土砂崩れが起きた原因を調べる方針です。


「県や市が、土砂崩れが起きた原因を調べる方針」ということだが。
これ見た瞬間に、国道169号の崩壊と同じだ、とピンときました。
凍結融解』ということじゃね?と。以下、共通点まとめてみた。

・時期:169号➡12/23、姫路民家➡1/30 
・斜面被覆:モルタル吹付工
・証言:「雨も降ってないのに崩壊した」
・崩壊地盤:169号➡後期白亜紀砂岩泥岩互層、姫路民家➡丹波層群
どちらも古い地層で付加体
・斜面に対する日当たり:多分良好… ここは適当、知らんけど

「調べる方針」といったって、調べてもおそらく分からんですよ。サイエンスとしてメカニズムは解明されることは非常に厳しいでしょうし、そこにこだわったところで、崩れたものは崩れたという事実でしかなく、対策することに対してしか意味を持ちません。
モルタル吹付工の斜面が崩れた!ということに対してどうするか?の意義のみで、原因究明に明け暮れすぎるのはどうだろう…。
背面の水抜き不良、地山の風化進行に伴う土圧、もしくはすべり推力の増加が一般的に言われている崩壊原因なわけで、トリガーとなるサイエンスは社会インフラ整備的には結局どうでもよい。凍結・融解についても、権威はおっしゃっているものの、はっきりした確証は出ていない。「バランス拮抗が、崩れた」という事実だけだ。

上記共通点のように、類似ケースと状況証拠を重ねて、「おそらくこういうことでしょう」、という見解程度のものですね。あくまで、できて「見解」なのです。

老朽化モルタルについては、保全対象が人家であろうが鉄道・道路であろうが、すでに数年前から社会的問題になっています。施工後50年以上の箇所が山盛りあるので。
老朽化モルタル吹付箇所は、以下のような流れで対策検討されます。

1.モルタル健全度評価 ・・・様々な手法
2.対策工方針決定

健全度評価はとても重要ですが、悪くなっている原因究明はしません(普通に風化作用以外は分からないので)。健全度は、打音調査のほか、コア抜き、赤外線センサーによるモルタルの浮き(空洞)状況を調べる方法等がある。
もちろん、湧水も調査する。
対策工法は、昔からあったのはあったのですが、近年、しっかり体系化されてきており、状況に応じた対策を講じやすい状況になっていると感じます。

・日特建設:ニューレスプ工法
・ライト工業:のりフレッシュ工法

以下は、のリフレッシュ工法の例


こういった工法が、大手ゼネコンさんから開発されています。
特徴は、地山まで結構な深さまで改良する方法もあるということです。

ただし、崩れてしまった斜面は、こういう工法とは違うことを考えないといけません。老朽化モルタル対策は、予防保全であり、崩れ去ったものは事後保全なので考え方が変わります。


ちなみに、今回の類似事例と思っているのが、これです。
規模は、ずいぶんと差がありますが。

※2023/12/23 国道169号の崩壊


23日夜に奈良県下北山村の国道169号で発生した土砂崩れで、国土交通省近畿地方整備局の道路防災ドクターとしてアドバイスを行う京都大の大西有三名誉教授(岩盤工学)が24日、現場調査後に報道陣の取材に応じ、原因について「最近寒暖差が大きかったため、急激な温度変化によって地中の水が凍ったり解けたりを繰り返す『凍結融解』によって岩盤の劣化が進んだ可能性がある」との見解を示した。


とここまでは技術的視点の話、ここからは、社会資本整備として、ステークホルダー問題の話し。

最近の状況
2025/6/17 撮影

明らかに南側の崩壊が進んでます。
約半年、放置されてます。

地権者がややこしいということなのでしょうか?
さっさと応急措置して、それから交渉とはいかないのでしょうか。ちょっとそのあたりは分かりませんが、このパターンは、姫路市辻井8丁目の崩壊(2016年崩壊)と似てるような気がします。

以下、日経XTECH記事より



市は、このままでは今後も崩壊が起こる可能性が高いと判断。対策工事の実施を決めた。

急傾斜地法を適用すれば、自治体の費用負担によって対策工事を実施できる。しかし、崩壊した箇所は1970年代に宅地造成された人工斜面なので、自然斜面に限定している同法の適用対象外だ。

市は、地権者に費用負担を求めると事前に伝えていた。その時点で、具体的な金額を提示していたのかどうか、市は明らかにしていない。工事期間中に一部の地権者から費用負担について提案があったが、全員の意見がまとまらず合意には至らなかった。


ということで、姫路市と地権者20人で裁判になっていたようです。
県砂防課によると、土砂災害警戒区域においてでも、過去に民間開発などの手が入っている場合は対象外ということだそうです。人工斜面には、手が出せないのが実情だとか。

姫路市山畑新田の2025年崩壊についても、人工斜面ということで、行政は手を出せず、被災斜面は放置され続けるということになっているのでしょうか?
人工斜面という観点では、明らかに切ってモルタル吹付していますしね。

行政からしたら、辻井崩壊の件で公費を使って対策したはいいものの(私から見て中途半端な対策の印象を受けますが)、裁判にもなり、さらに工費回収不能にもなって(結果は知らないけど)、もう懲りたということでしょうか?
姫路では、斜面被災したら終了!ですか…。持つリスクですね。

まぁ、本質的には、派手に崩壊した箇所に限って、次の大崩壊は起こりにくいものなのですが、オーバーハング部を中心にどんどん小崩壊が進行しており、症状を和らげるべき対策を打つべきであり、いつ手をつけられるのか、状況を見ていきたい。