地形・地質概要の軽視

業務の骨格

地形・地質概要は、多くの土木コンサルタント業務の報告書巻頭についていると思います。ただし、本当に適当にあしらわれたとしか思えない出来のものが散見されます。そもそも、”概要”という響きが良くないような…。「概要=手を抜く」に変換されているように思われて仕方ないです。”文献調査”のほうが正しいでしょう。

過去の文献資料から得られる情報の主なものは、以下のような事項が挙げられます。

  • 地形的特徴
  • 地質区分
  • 地質層序
  • 地下水について
  • 露頭の位置、柱状図

最近では、AIで速攻で地形・地質概要が出来るとか…。また、地質図naviを用いて、色がついている箇所の岩種を書いただけ、という人も多いのじゃないでしょうか。それでいいケースもありますので、一概に言えませんが。

また、層序表がないものも多いです。
地質年代は非常に大事です。泥岩、頁岩といっても、地質時代で工学的性質はまるで異なります。新第三紀と古第三紀でも、泥岩とひとこと言っても違うんです。

本当は、地形・地質概要は、業務の骨格をなすもので、非常に重要です。労力と時間を要するんですよね。
沖積・洪積・基盤岩、この区分だけでそれ以外は影響しない、という業務では、こんな地形地質概要なんてスルーでいいでしょう。紙と時間のムダ。

適当扱い

では、どうして適当に扱われるか?その多くが金にならないからです。仕事に対する対価歩掛が無視されているからです。業務のオマケなんでしょうね。
まれに、文献調査ということで見ていただくこともあるのかな?

業者にとって、要は、時間の無駄な厄介者扱いです。
お客さんで読んでいただけることは、稀でしょうし…。やりがいがねぇわ!、ってとこです。

大ミス

まともにリサーチされずにされた業務で、大きなミスをしている事例に出くわしました。きちんと、文献を読めば書いてあることなのに…。近傍の露頭情報もしっかり記載されているにもかかわらず、ということです。

地質解説は、地質屋さんの「たわごと」「独りよがり」のように言われることが多いのですが、そいつはどうかな、という事例です。だいたいが”地質屋さん”という呼び方は、土木、建築畑の方々からディスられるときに使われることが多いので、私は大嫌いな響きです。「堅いか軟らかいか、以外は意味ない!」ということで、それ以外ごちゃごちゃいうな、というような…。意味ありますから。工学モデリング、グルーピングの前提は、地質学ですよ。

地質文献の見方

地質文献の見方は、熊本のダム業務時に、日本中の図幅でも、とても分厚い部類に入る(全169ページ)難解な”竹田地域の地質”を読み、時間がかかったのですが、どういう構成で情報が書かれているかなど、とても勉強になった記憶があります。
筆者の小野晃司先生から直接指導を受けたこともあり、印象深かったです。

表面上は、何も生産しない(売り上げを産まない)タイパが悪いだけの無駄な時間なのですが、産総研の図幅の解説等をじっくり読むことは、業務の全体の出来を左右します。
とても分量が多く、文字も小さいので、よく分からない印象を持つと思いますが、そのうち必要な個所をかいつまんで見れるようになってきます。

文献アプローチの仕方

私のリサーチする手順を紹介すると、以下のような感じです。

  1. 産総研 5万分の1図幅 https://www.gsj.jp/Map/JP/geology4.html
  2. 5万分の1 土地分類基本調査 https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/landclassification/land/l_national_map_5-1.html
  3. 各地域土木地質図 WEBにはない
  4. 地すべり地形分布図 https://www.j-shis.bosai.go.jp/landslidemap

国の情報を使うか?都道府県の情報を使うか?、これは必ず両方見ておく必要があるように思います。どちらが最新の情報か違うこともありますし、都道府県資料の簿冊からしか得られない情報もあります。要は、複数ソースから情報を見ておくことが大事ですし、業務に説得力(確からしさ)が生まれます。

地すべり地形分布図は、必ず見るようにしましょう。地形判読からの予察図ではあるのですが、その道の我が国権威の方々が判読されているものなので、概ね間違ってない(実際に地すべりがある)と考えて良さそうです。断層等の構造と同じく、すべての土木技術に影響するものですので、チェックはしましょう。